往年の飛行機エンジンに想うこと(宮崎駿風に)

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先日、書店を覗いたら本棚に置かれてあった一冊に目が止まった。懐かしの月刊誌「丸」の表紙に第二次大戦の名機FW190が描かれているではないか。懐かしくて思わず手にとって買ってしまった(ん十年ぶり)。思い起こせば僕が子供だった頃はまだ戦後で、当時の児童雑誌には今では考えられないような実録戦記物や戦争漫画の連載があった。名作「紫電改のタカ」などを読みふけってワクワクしたもので、当時の子供達はみんな小さなミリオタだった。

少年時代は模型ブームで模型屋のウィンドウを見るのが楽しみだった。長じてはミリオタ友人の影響でプラモデルをちょこちょこ作ったりしていた。リアリティを再現するためには資料が必要で「丸」やその別冊をずいぶん読み込んだものだが、社会人になってからは模型作りを卒業した。僕は艦船派だったが飛行機については独軍モデルが好きで、特にお気に入りはフォッケウルフFW190だった。

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ドイツは中世以来の武器輸出国だから、彼らが作る武器は高性能に加え頑丈かつ生産性が高い。日本刀のような美術性は皆無でひたすら合理的だが、時々凝りすぎて失敗することが多いことも周知の事実。このFW190は液冷エンジン王国のドイツ空軍にあって強力な空冷エンジンを搭載、メッサーシュミット社のBf109とともに航空戦力の主力を担った。

識者ならご存知のように日本はダイムラーベンツ社からエンジンライセンスを受けた三式戦飛燕を除いて、すべて空冷エンジンを採用した。少年の僕は日本機に似たシルエットのFW190に親近感を覚え、小さなプラモデルを作ったことを今でも覚えている。もちろん米国は仇敵で独国とは同盟軍であったということもプチ理由(笑)

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FW190のキモはその空冷星型複列14気筒エンジンとタフな機体である。初期型エンジンはBMW139だったが、後に傑作BMW801(1,700馬力)に換装された。前面投影面積を彫らすためにエンジンカウルの中に突起物をすべて収めている。また様々な必須操作をスロットルレバーだけで統合制御できる“コマンドゲレーテ”を搭載したことでも有名。ドイツ流合理主義が結実したエンジンで見た目も機能美に溢れている。いまでも偉いが昔のBMWも偉かった。

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上の写真は中島飛行機(現スバル)が作った最後の航空機用エンジン「誉」。2,000hp級の次世代エンジンとして野心的な工夫が盛り込まれたが、当時の日本の工業力、社会構造ではそれらを量産する生産技術に欠け、結果としては品質低下による極端な稼働率低下となった。

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こちらは知る人ぞ知る英ロールスロイス・マーリンエンジン。スピットファイヤーに積まれバトル・オブ・ブリテンに勝利をもたらした傑作エンジン。面白いのは排気量を変えずスーパーチャージャー改良によって性能向上を果たしたため、機体の変更を最小限に抑えられたということ。いかにも物持ちのよい英国的合理主義で感心する。

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当時のエンジン一つをとってみても、お国柄でこれだけの違いがある。残念ながら現代においてもこの構図は残っているのではないか。昨今は日本えらいとか日本のものづくり最高とかというセリフを耳にすることが多くて、メードインジャパンが安物の代名詞であった時代に育った人間には、大いに違和感があって気恥ずかしい。

トヨタスープラはBMWの直6を搭載するし、F1では5年かかってもメルセデスのパワーに勝てない。ロールスロイス・マリンは今でも超一流で飛行機はもとより、自衛隊の護衛艦にも採用されていたりする。エンジンというのはその国の科学力と技術力の集積である。日本も決して悪くないとは思うが、昨今は金儲けと保身しかない企業家(政治家も)ばかりで、ますます地位が低下。誤魔化しを恥と思わなくなった企業や役所を見ていると、先行きが暗く思えてならない。今日は大戦中の名機から始まって、とんでもない方向に筆が進んでしまった。迷言多謝。
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