2021-02-14 (Sun)
18:01
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最近は鈍くなったのか、どうも野鳥の動きに眼が従いていかない。必然的に広角低倍率双眼鏡を選ばざるを得なくなってきた。以前にはニコンの名機8×30E II、最近ではコーワの超広角機BDII32-6.5XDを使ったが、今回は以前から試してみたかった賞月観星の双眼鏡を入手したのでレビューしてみる。賞月観星はそのコストバリューで売出し中の双眼鏡ブランドだ。一マニアが双眼鏡への熱い思いが高じて、自らがプロデュースするに至ったプライベートブランドだが、その実力の高さ、コストバリューで、多くの愛好家たちの支持を得ている。

今回購入したのは賞月観星プリンスUF7x32WP、ラインナップ中ではハイエンドに位置する双眼鏡だ。倍率7倍、実視界は9.3度(見掛視界65度)なので視野は広く探鳥には有利だ。今では少数派のポロ型双眼鏡だが、マルチコート、ツイストアップの見口採用、窒素ガス封入、防水仕様など近代化は図られている。対物レンズにはHOYA製EDレンズ(空気分離式2枚玉!)が奢られている。また光透過率94%のハイスペック。がハイエンドといっても税込28,800円、庶民にはありがたい。

レビューのためにツァイス Conquest HD10x32と比較してみた。倍率は違うが、同一口径だし評価の高いConquestの見え味にどれだけ迫れるか興味があった。サイズもアウトドアでは重要な要素だ。30~32mmクラスでは小さくて軽い双眼鏡は色々ある。重量的には不利なポロ型だが、同じポロでもニコン8×30E IIは575gで200gも軽い。コンパクト性を優先するならUF7x32(756g)は不利だ。しかしカメラレンズの世界では迷ったら大きく重いレンズを買えという。設計に無理がないので性能を出しやすいということだろう。実用的には重さが効いたのか、低倍率と相まって構えてもブレが少なかった。

肝心の見え味については、大変満足できる結果だった。
●中心部解像感…賞月観星UF7x32 ≧ Conquest HD10x32
●良像範囲………賞月観星UF7x32 > Conquest HD10x32
●コントラスト……賞月観星UF7x32 ≦ Conquest HD10x32
●色収差…………賞月観星UF7x32 > Conquest HD10x32
●歪曲収差………賞月観星UF7x32 ≧ Conquest HD10x32
●色再現性………賞月観星UF7x32 ≧ Conquest HD10x32
フレアについては入念な迷光対策が効いているのか、兄弟機ED6.5x32より大幅に改善されている。逆光では周辺下部にフレアが出るが範囲は少ない。光量が多いと順光でも少し認められた。テスト環境ではゴーストは発生しなかった。

現在入手できる超広角機(所有経験あり)とUF7x32WPを比較してみると
▼対ニコン8×30E II
視野の広さでは見掛視界70度(JIS)を誇る8×30E IIに太刀打ちできないが、見え味で勝る。E IIの弱点は短いアイポイントでブラック・アウトしやすくメガネ使用者には辛い。ゴムの見口も今日的でない。しかしUF7x32よりコンパクト&質感の良さでリード。
▼対コーワBDII32-6.5XD
コーワの最新鋭機より視界の広さを除いて見え味で勝る。コンパクト&操作性、最短合焦距離(1.3m)を優先するならコーワか。
双眼鏡ではその見え味について語られることが多いが、覗きやすさも大事だ。特にメガネ使用者はブラックアウトやチラチラ感に注意する必要がある。ハイアイポイントだからいいというわけではなく、双眼鏡、あるいは個人差によって瞳孔の位置がシビアで覗きにくいものがある。この双眼鏡に関してはまず覗きやすい方でストレスは感じなかった。また被写界深度が深いせいか、ピントのピークが掴みづらい印象がある。言い換えれば適当にでも観察できるということだが。

個人的な感想だが、ピントリングが固め。開発者に聞くとピントリングが軽いという意見が多かったので、昨年から固めにしているとか。おそらくユーザーに星見屋さんが多いのだろう。あと実用上全く問題はないが、オーバーインフが多いかな。付属品については特に可もなく不可もないように感じた。※賞月観星という漢字ロゴプレートがいい。一目で中国製とわかるところに矜持を感じる。

結論として、図体の大きさ、重さ、ちょっと癖のある操作性を寛容できるなら、買って惚れ込める双眼鏡だと思う。この双眼鏡の良さはそのコストバリューもさることながら、双眼鏡を色々使ってきた人にこそわかるものだと思う。ポロ型特有の立体感ある見え味も素晴らしい。写真は段ボール箱に描かれていた可愛い手書きイラスト、夏の大三角を描いたものだとか。最後に販売元(開発者)のサポートは大変満足できるもので、今後とも賞月観星の新商品をウォッチングしていくつもりだ。
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Last Modified : 2022-05-26